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財団法人深田地質研究所年報 第1号 2000


東・東南アジア数値地質構造図の作成について

Compilation of a digital Geotectonic Map of East and Southeast Asia

佐藤 正・奥村公男

SATO Tadashi and OKUMURA Kimio

要旨:東南アジア地域のデイジタル地質構造図の 編纂がCCOPのプロジェクトとして進行中であるが、そのうちのフィリピン・マレーシア・インドネシア地域の分がこのほど完成し、日本の地質調査所からCD-ROM1枚に収めて出版された.この構造図はテクトニックの解釈に必要な基礎的なデータを収録し閲覧するように設計されたもので、その編集方針と数値化作業の大綱を述べる.
( p. 1-8.)

南部北上山地牡鹿半島のジュラ紀層の層位学的研究の補足

Additional Note to the Biostratigraphical Study of the Jurassic in Ozika Peninsula, Kitakami Mountains, Japan

深田 淳夫

Atsuo Fukada

要旨:筆者の1960年の博士論文以降,北上山地牡鹿半島のジュラ系の研究は大きい進展をみた.ここでは筆者がこの論文に記述した事実のほかにこれまでに明らかになった事実を補足する.とくに大形のアンモナイトで未記載のものを図示する.
( p. 9-23.)

地形解析における三角斜面の検討 その7 「出戸」地区の大集合三角斜面とその形成

On The Trigonal Shaped Slope in The Geomorophic Analysis no.7
On the Formative Stage of Large Complicated Trigonal Shaped Slope in Deto district, Shimokita Peninsula , Aomori Prefecture

藤江 力

Tsutomu FUJIE

要旨:地形解析において斜面の基本の1つと考えられる三角斜面について、既にその1(1994a)からその6(1999)で報告をしている。今回は、青森県下北半島の「出戸」地区の海岸沿いに分布する大集合三角斜面LCpb・-1について、型式・形状区分・標高・斜面の大きさ・斜面の勾配・支沢と支谷・谷地形・埋谷・尾根などを記述し、また、周辺を含めた地質構成・分布・地質構造および各地層の堆積状況を考慮し、大集合三角斜面の形成過程(II、III、IVおよびV期)を考察した。なお、下北半島東北部の海岸沿いの三角斜面を含めた地形の形成時期(I、II、III、IVおよびV期)も推定した。
( p. 24-44.)

東京都東西方向地質断面図の作成の概要

The Outline of Geologic Profile in E-W direction of Musashino Plain, Tokyo City

藤江 力・深田淳夫・小林英一・堀口隆士

Tsutomu FUJIE, Atsuo HUKADA, Eiichi KOBAYASHI and Takahito HORIGUCHI

要旨:東京都東西方向地質断面図の作成は、平成11年3月に深田理事が明星学園高校の理科教師と生徒に地質の話として「東京の地盤」を講演し、その時に自分達の住む武蔵野台地の地質を勉強するため共同で作業を行ってみてはという事で始まった。⑲深田地質研究所と明星学園高校とで平成11年度に8回の打合せを行い。地質断面は西の立川市から中央線に沿い、深田研を経由し上野から東は船橋市・市川市を結ぶ延長約56kmで、図面の縮尺は水平1万、縦2千とし3年計画の初年度の平成11年度では地質の資料を都土木研究所(1990)の「東京都総合地盤図」を参考にして作成した。この地質断面図は、10月9日の深田研一般公開で展示した。また、作業は文献の収集、新聞スクラップ作成などを行った。
(p. 45-47.)

甲府花崗岩体・昇仙峡花崗岩中の節理及び雁行状節理の形態解析─節理はどちらから割れていったか?─

The direction of joint propagation in the Syosenkyo Granite, Kofu area.

藤井幸泰

FUJII Yukiyasu

要旨:昇仙峡地域と黒平地域に分布する花崗岩中の節理の方位,及び節理の割れていった方向を測定し,統計的解析を行った.昇仙峡地域にはNE走向高角傾斜とNW走向高角傾斜の節理が卓越し,NE走向は北東から南西,NW走向は上から下へ割れていったものが多い.これらは岩体の周辺部から中心部の方向であり,冷却の方向と一致する.
黒平地域にも3方位のほぼ直交する節理が卓越しているが,これらの割れていった方向に卓越性はみられなかった.
(p. 48-58.)

パレスベラ海盆から採取されたタービダイトの物性測定による圧密評価と磁化測定による古流向解析

Paleocurrent Analysis by Anisotropy of Magnetic Susceptibility and Physical Properties of Turbidites Collected from Parece Vela Basin

川村喜一郎・池原研・金松敏也・藤岡換太郎・松岡裕美

Kiichiro KAWAMURA, Ken IKEHARA, Toshiya KANAMATSU, Kantaro FUJIOKA and Hiromi MATSUOKA

要旨:本研究ではKR98-01航海によってパレスベラ海盆から採取されたタービダイトの古流向を、帯磁率異方性(AMS)と残留磁気測定を用いて解析した.コアは7層のタービダイトからなり、1枚のタービダイトは平行葉理部と脱水部からなり、それらのタービダイト間には遠洋性粘土層がある.石灰質ナノプランクトン化石や火山ガラスが多く含有されることから、タービダイトの供給源として七島・硫黄島海嶺が推定された.今回、その予測を立証するために古流向解析を行った.測定の結果、北東から南西への流れ(タイプ1)と北西から南東への流れ(タイプ2)の2方向の古流向が見られた.海底地形を見ると、試料採取地点付近には、南北性の凹地が存在しており、タービダイトはその凹地を通ってきたと考えられる.凹地の北延長上の七島-硫黄島海嶺が、タービダイトの供給源である.また、本研究では、堆積物の物性の測定から、堆積物の圧密と船上での押し出しに伴う二次的変形について議論した.
キーワード:古流向解析、タービダイト、パレスベラ海盆、帯磁率異方性、物性
Key words: Paleocurrent direction analysis, Turbidite, Parece Vela Basin, Anisotropy of magnetic susceptibility, Physical properties
(p. 59-72.)

鹿児島県出水市における1997年針原崩壊の地形的特徴

Topographical characteristics of the 1997 Harihara landslide in Izumi-shi, Kagoshima Prefecture, Kyushu, Japan

遠藤(池田)浩子・大八木規夫

Hiroko (IKEDA) ENDO and Norio OYAGI

要旨:鹿児島県出水市針原地区においt、梅雨に伴う大雨により1997年5月10日大規模な崩壊が発生し、21名が亡くなった。この崩壊源の規模は幅79m、奥行185m、深さ20m、体積12.4万・であった。崩壊源周囲の地質は矢筈岳火山岩類に属する鮮新世・更新世の火山岩類で、下位から火砕岩、淡灰色安山岩溶岩、暗灰色安山岩溶岩で構成されている。これらの安山岩類は著しく風化しており、崩壊源の側方崖や滑落崖では浅部は粘土質の赤褐色風化帯、その下位は玉葱状構造のよく発達した風化帯となっている。崩壊発生場所は凹状地形を呈し、1982年長崎災害の事例と類似した反復性後退崩壊の特徴をもった斜面であった。移送堆積域では、崩壊源脚部から450m下流右岸側に、玉葱状構造を残存した状態で運搬された高さ1m、幅3mのブロックを発見した。この位置は、他の機関が同様の堆積物を確認した位置よりも140m下流である。上のブロック発見位置は、空中写真判読によって小規模ながら流山の形態を示している。このような流山地形は上述のブロック発見位置よりも55m下流であった。この場所は災害後に土塊が擾乱されたが、玉葱状構造をある程度保存した礫を確認できた。したがって、崩壊源脚部から500m付近までは岩屑なだれの状態を保った部分があったと考える。また、移動体の移送の途中から流動性の高い部分も形成したと推定される堆積物も認められた。
(p. 73-96)

1997秋田県澄川地すべりで発生した高速土砂移動現象の解析

Anaysis of the High Speed Mass Movement accompanied with the 1997 Sumikawa Landslide in Akita Prefecture

堀 伸三郎・中島北夫

Shinzaburo Hori and Kitao Nakajima

要旨: 澄川地すべり末端部の崩壊土塊が澄川ー赤川河床を高速長距離土砂移動した現象は、崩壊土塊が岩屑なだれとして河床を流下する岩屑なだれ本体部と、岩屑なだれが流下する過程で河川水をかき集め、多量の水と侵食した河床物質や斜面表層物質が岩屑なだれを包む周辺層からなる.複数の層相からなる堆積構造が堆積物として残されたが、これらの堆積物は流れの2層構造を反映したもので、一回の流下現象から堆積した.岩屑なだれが移動現象の主体となる運動であることから、地すべり流動シミュレーションによる再現計算を行ったが、流下範囲を高い精度で再現できた.
(p. 97-111)

東北地方北部における地すべり地形と後期中新世-更新世のカルデラ

Relation between landslides and Late Miocene to Pleistocene calderas in northern Tohoku, Japan

大八木規夫

Norio OYAGI

要旨:東北地方北部の脊梁地帯に分布している後期中新世~更新世のカルデラの堆積物と地すべり地形との関係を最近の地すべり地形判読と最近の火山体や地熱研究に関連した研究成果、および、これまでの現地調査との資料に基づいて考察した。地すべり地形の発生ともっとも関係の深い堆積物はカルデラ堆積物上位を構成する湖成堆積層である。地すべり地形のタイプは湖成堆積層の性質と湖成堆積層の上位に載る後カルデラ火山岩類の性質によってきまると考えている。
(p.112-127)